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2014年2月に作成された記事

佐野美の甲冑展展観

“さのび”って、略さない方がいいか(笑)

三島市の佐野美術館に甲冑展を観てきました。

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『兜KABUTO 戦国アバンギャルドとその昇華』
http://www.sanobi.or.jp/exhibition/kabuto_2013/
(※同じ巡回展のまとめサイトでいくつか写真が見れます http://matome.naver.jp/odai/2138538543652324001)

時おり雪がちらつく寒い一日でした。
予備にとリュックの底に入れておいたヒートテック肌着上下を忘れてたら、風邪引いてたかも。
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1月7日から始まったこの展示、実はこの日が最終日。
予想以上に見応えある内容でした。会期ひと月で終わってしまうなんて勿体ないくらい。でも地方展示ではこの位が普通なんでしょうかね?


さて、展示内容は、ポスター写真になっている…
「伊達政宗所用・黒漆塗五枚胴具足」(仙台市博)や
「蒲生氏郷所用・黒漆塗燕尾形兜」(岩手県博)、
「黒田官兵衛所用・銀白檀塗合子形兜」(もりおか歴史文化館)、
「黒田長政所用・黒漆塗桃形大水牛脇立兜」(福岡市博)
…といった、有名な戦国武将ゆかりの甲冑また変わり兜のほか、工芸的・芸術的に優れたな刀装具類の陳列でした。
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また併せて、佐野美術館所蔵品の「伝上杉謙信所用・秋草文黒漆太刀拵」等も展示。

出品数でいうと後者の刀装具類が圧倒的に多いのですが、鞘(さや)・鍔(つば)・目貫(めぬき)・栗型(くりかた)・鐺(こじり)等々の緻密で繊細な意匠に唯々感心しました。写真も無いのに言っても仕方ありませんが、手作業でよくあれだけの表現ができるものだと思います。
私以外の見学者も有名な甲冑が当初の目当てなように見受けられましたが、展示後半の金工漆工の素晴らしさに、暫し足を止めて見入る人、目を細めて感嘆する声が絶えませんでした。

私の一番の目的は、高梁市歴史美術館からの「銀箔押兎耳大角立物付兜」と「板倉勝重所用・日の丸金箔押紺糸威二枚胴具足(写真)」。

これらは5年前、備中松山城見学に行った際、同美術館にも足を運んだのですが、計らずも館内整理中で見学できなかったのでした。今回ようやく…です(笑)。
(でもやっぱり、現地の歴史を探訪しながら見たかったな)

面白かったのは、「黒漆塗三十二間筋兜 鉄線前立・三日月前立付」(個人蔵)。

所用したのは武将ではなく茶人。武者小路千家の茶人、木津宗詮(きつそうせん)三代。
江戸時代といっても、初代が天保の頃の人だから、幕末の頃の作品ですね。もう完全に装飾品。
復古調の筋兜にテッセンと三日月の前立て。なんだか加山又造の日本画みたいです(笑)。
漢字で鉄線と書くのを防具に見立てているのでしょうか?
眉庇(まびさし)の北斗七星は、茶杓の見立てかもしれませんね。
同じ茶人でも、千利休所用の(表千家伝存)甲冑に比べると、戦の匂いを全然感じません。

刀装具は、後半の“末永雅雄コレクション”が秀逸。
百足の目貫とか大黒さんの笄(こうがい)とか。細密で目が疲れるほど(実際、展観後トイレ行ったら充血してましたw)。
外国人が根付とか鍔なんかの骨董をコレクションしてる理由も分かる気がします。

戦国時代や江戸時代に思いを馳せるというより、武具工芸の粋を堪能した展示会でした。

美術館庭園の梅。
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20年ぶりのベアトリーチェ

リフォーム以来、未だに部屋の片づけに追われてます(苦笑)。
書籍・コピー類や未組立てプラモの類を売るか捨てるかの選別なのですが、さすがに余暇をずっとこれに充てているのもいけません。ヤケクソで廃棄してる本もあるので、精神的に全然休息になってない…(汗)

ということで、節分の日、『ラファエル前派』展を観てきました。
いや、前からその予定だったのですが(笑)

場所は、六本木の森アーツセンターギャラリー。この美術館、というか六本木ヒルズ自体が私今回初訪問でした。
デザイナーや企画者の意向をふんだんに取り入れたような複合施設ですが、それだけに展示会場にたどり着くまでに少し迷ってしまいました。
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同ギャラリーは森タワー52階。展望台と同じフロアでした。こんな高い所で展観するのは生まれて初めてかも。他人事ですが、搬入とか大変なんじゃないでしょうかね。

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ラファエル前派の絵を観るのは、20年前にロンドン・テート美術館に行って以来か。
当時は特に興味を持っておらず、(有名なミレイのオフィーリアくらいは見ておこうか)くらいな気持で行ったのでしたが、素晴らしい作品が一杯で入り浸ってしまいました。たしか10時頃に入ってから、昼食も忘れて閉館までいたと思います。もちろん、見ていたのはラファエル前派作品だけではないのですが。
なんというか、緑や青など自然の色彩の鮮やかさ、ライトなシニカルさながらも抒情的な表現などに魅力を感じたのだと思います。美術史的な事やアカデミックな評価などに関してはさっぱりで、本当に視覚と情感で惹かれたのです。

それ以来20年。今回楽しみにしていたのは、ロセッティの「ベアタ・ベアトリクス」、アーサー・ヒューズの「オーロラ・リー」「4月の恋」、ヘンリー・ウォリス「チャタートン」、そして、艶っぽい(笑)コールドロンの「破られた誓い」等との再会。そして、初見となるミレイの「マリアナ」とバーン=ジョーンズの「愛の神殿」でした。
やっぱり実物は良いですね。当たり前ですが。あと、関係無いですが、特注の額が見れるのも実物ならでは。

ところで、今回の展示は全てテート美術館からのものですが、残念ながら、バーン=ジョーンズ「黄金の階段」「コフェチュア王と乞食娘」、ミレイ「ナイト・エラント」、ホルマン・ハントの「我が英国の海岸」、ロセッティの「聖母マリアの少女時代」、フレデリック・ワッツの「希望」、などは来ていません。特に後者2点はまた観てみたかったので、少し残念。

しかし、ミレイの「マリアナ」はドレスのコバルトブルーがとても美しかったですし、その生地(ベルベット?)の質感と背をそらせたポーズは確かに官能的でした。バーン=ジョーンズ「愛の神殿」は、展示の最後の方でしたが、隣に「愛に導かれる巡礼者」がドーンとあって、そっちに視線がもっていかれ気味でした。もう少しひと息置いて見える構成にすれば、引き立ったと思うのですが。
ロセッティの「ナザレのマリア」「ダンテが見たラケルとレアの幻影」「ダンテの愛」も良かった。
眼福眼福。

ともあれ、西洋美術史にさっぱりな自分にとっては、作家やモデル達の相関関係や反映されている物語などの説明は楽しかったですし、印刷物では絶対分からない発色の味わいも堪能しました。
また、20年歳を重ねて見かたが変化している自分を再発見した気もします。
ミレイの「釈放令、1746」のように女性の強い精神力(肝が据わったというべきか)を描いた作品などは、10代後半の頃には余り魅力を感じませんでしたし、風景画に目を注ぐ時間は他のジャンルに比べると短かったでしょう。
風景画は、心の情景ですから、(惜しげも無く気軽にどんどん撮れる)デジタルカメラ全盛の今だからこそ、その良さが分かる気がします。特に旅先でふと足を止めて立ち去り難く感じるような一瞬は、100枚の写真よりも1枚の絵の方が思い出を呼び起こしてくれるでしょう。
マドックス・ブラウンの「干し草畑」は、歌の一つでも詠んでみたくなるような、匂い漂う農村の名月を感じさせてくれました。プライス・ボイスの「サリー州ウォトンの風景、秋」は、ラファエル前派作家たちに愛された伝統的農村風景の斜光穏やかな風景で、ずっとその前に佇んでいたくなりました。

これだけ見ると、やはり現地でアート探訪をしてみたくなります(苦笑)。

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おみやげは、図録とミニ・クリアファイル(ロセッティ「ダンテの愛」)を。
帰りの美術館エントランスの通路、対向者の顔どこかで見た事あると思ったら、村上隆さんでした。(えっと、知人だったかな?)と、しげしげ見てしまいました。

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テレ朝「報道ステーション」の天気予報でおなじみの毛利庭園。
毛利甲斐守邸跡ということで、少しは大名庭園の面影が残ってるのかと思ってましたが、全くの新作のようです。結構、こじんまり。
お庭ついでに、鳥居坂上の国際文化会館(旧岩崎小彌太邸)の前にも足を運んでみましたが、こちらの方が期待できそう。
この辺りも古き良き山の手を感じられて散策楽しそうでしたが、午後から寛永寺で節分のご祈祷予定だったので、またいつか。

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