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黒田長成別邸

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公開中の旧黒田長成別邸「清閑亭」に行ってきました。
場所は南町1丁目で、報徳二宮神社側から旧城内高校正門への坂を上った途中左手に門があります。

清閑亭は、国登録有形文化財に指定されており、2年前に所有者であった第一生命から小田原市が買取りました。
今まで年に数回の公開のほかは通常公開されていませんでしたが、今月より、地元で街おこし協議などしているNPO法人「小田原まちづくり応援団」による実験的活用として、無料の建物公開および有料の喫茶サービスが供されています。

建物を構えた黒田長成は、最後の筑前福岡藩主・黒田長知の長男。
英ケンブリッジ大を卒業し、貴族院議員を経て貴族院副議長を長年務めた人物です。晩年は枢密顧問官でした。

この小田原別邸を建てるにあたっては、立地である天神山の尾根続き高台に邸を構えていた閑院宮(載仁親王)家の土地を一部購入したようで、同宮家との関係を考えさせます。
のちに長成の長男・長禮(ながみち)は、載仁親王の第二王女(茂子)を妻に受けています。
「静閑亭」の名の由来は、長成の妻・清子(島津忠義の娘)と閑院宮家から一字づつ採ったのでしょうか。

建築は、一部2階付きの木造平屋建て。
入母屋造りの純和風で、主屋は数寄屋風書院造り。
ほぼ全室とも海に面しており、ガラス戸も大きく採られて大変開放的。
前に障害となる高層建築が無いので、今でも海からの風がよく入ってきます。
築年は明治末から大正初期。
戦後黒田家から所有が何度か移るなかで解体・増築がなされているらしく、まだ不明な点があるようです。

主屋で一部使われている杉戸絵は、かつては小田原藩の絵師・岡本秋暉の作ではないかと言われていましたが、否定されているようです。しかし、画風は似ているので弟子筋ではないかとも。
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絵の構図が現在の戸の大きさに調和していない点などから、他所から持ち込まれ加工されたもののようです。


現存している建物は概ね良く残っていますが、手を入れたい老朽化した箇所は内外ともに見られました。

昨年末のNHKドラマで放送された『坂の上の雲』主人公の1人、秋山真之は、小田原の山下亀三郎邸で最後を迎えますが、山下邸は清閑亭の南に近接していました。
山下亀三郎は山下汽船の創業者で、現在では横浜の山下公園などにその名前が残っていますが、彼は秋山と同じ愛媛の出身です。
現在山下邸は当時の石垣くらいしか残っていませんが、清閑亭の庭からは今でも海が見渡せ、往時を偲ぶ事が出来ます。

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小田原まちづくり応援団による一般公開と喫茶サービスは、今月いっぱいは毎日、以後は土日のみの公開とななるそうです。
メニューは300円のコーヒー(菓子付き)だけですが、見学者が少ないのでとても落ちついたひと時を味わえました。

せっかく市の所有になったのだから通年オープンにして欲しいとも思いますが、四角ばった公共施設というのも味わいが無い…
現在行われているような、飲食やリラックスの空間が今後も供されるよう期待したいです。
今回の活用実験からどのような見解が出されるのか分かりませんが、個人的には鎌倉の「大佛茶廊」のようになってくれたら素敵だなと思いました。


それから、清閑亭の旧正門脇にある土手は小田原城の三の丸外郭土塁です。
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堀の方はちょうど、「和菓子・菜の花」の工場裏にあたります。
土塁・堀ともに大変良好に残存しているように見えます。
ここは三の丸の箱根口門から西に続く水堀が、空堀に変わる付近にあたりますが、正保期の小田原城絵図では、周囲が薮や畑に描かれています。
規模は大きく、北条時代の土塁が踏襲されていたのではないでしょうか。

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コメント

鴇約苑さま、はじめまして。
菜の花まんじゅうさんの裏の土塁がいつも気になっていました。色々検索しているうち、昨夜こちらのブログに出会い、北条関係の記事を一気に楽しく拝読させていただきました。
あの土塁を近くで見たくて路地を入ると、とたん、毎度、ご親切なお饅頭屋さんが「行き止まりよ~」と上に出る道を教えてくださるので近づけず、また上の道は柵があり、見られないものと思っていました。清閑亭の中に入れる時があるのですね。
小田原は一人で調べているため(趣味です)、なかなか情報が入ってこないので助かります。これからもチョクチョクチョク拝見させてください。よろしくお願いいたしまする。

投稿: マリコ・ポーロ | 2010年9月30日 (木) 12:09

>マリコ・ポーロ様
はじめまして!管理人の蒼庚斎と申します。
コメントありがとうございました。
とりとめなく適当に更新を重ねてきたブログですので、大変読みにくいかとは思いますが、何かの参考になったのでしたら幸いです。
レス遅れて申し訳ありません。
現在、増えすぎたカテゴリー項目を統一している所です。

仰られている「和菓子・菜の花」さんの工場奥は社員アパートもあるので、入れたがらないのでしょうね。色々古くて清潔に見えないし…。
確かに真下から見ると壁のような迫力はありますが(仕事関係で行きました)、ちょっと全貌が分かりにくかったです。
この度、土塁上から初めて見て、その規模と保存の良さに改めて感心しました。

清閑邸もまた興味深い建物ですし、機会あればスケールを実感してみては如何でしょうか。
年内でしたら土日に公開していると思います。
現在でしたら、報徳二宮神社境内脇の堀・土塁もブッシュが掃われて綺麗に見えますよ。


マリコ・ポーロさんは、後北条氏や城がお好きなのですか?
更新遅い上に内容薄なブログですが、いつでもまたお越し下さい。コメントも楽しみにしております。

投稿: 蒼庚斎 | 2010年10月 7日 (木) 20:53

蒼庚斎さま
ご丁寧なお返事くださりありがとうございます。感謝です。清閑邸、潜入してみます!報徳神社も行ってみます。例の伐採計画で木々が間引かれたのですね。あの鬱蒼としたオドロオドロシイ感じもけっこう好きでしたが、あれでは全容がよく分からなかったですものね。
よろしければ拙ブログもご覧いただけたら嬉しいです。そのまま名前ででます。ご感想などのお気遣いはご無用にござりまするが、間違い勘違いなどあらばご遠慮のうご指摘くださりませ。では、また。

投稿: マリコ・ポーロ | 2010年10月 8日 (金) 07:31

マリコ・ポーロ様

今更のレス…大変大変遅れてしまいました。
お許し下さい。
城址公園の植栽計画、ご存知かと思いますが色々と悶着ありました(苦笑)。
また、ブログにお邪魔させて頂こうと思います。
宜しくお願い致しますm(_ _)m

投稿: 蒼庚斎 | 2011年8月 3日 (水) 11:30

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